数泉(かずせん)からピンポイントへ(鹿児島2/3)
翌朝、もう一回、至高の湯に浸かり、いとおしい湯に別れを告げる。「また来るからな」ひとり呟く、危ない自分がいた。一方的な片思いである、あたりまえだろう。そもそも、温泉と相思相愛とはどんな状態をいうのだろうか。
この日は北薩摩から霧島の妙見温泉に移動。
これまでの温泉めぐりでは途中にある各温泉を攻め、1日に5~10湯くらいに浸かるのがふつうであった(相方は呆れてつき合ってくれなかった……)。
マニアの間で、このように1つの湯でも多く稼ごうとすることを数泉(かずせん)という。
だが、さいきんでは数泉しなくなった。いい湯に浸かったあと、循環系のひどい塩素泉に浸かって、気持ちよさを台無しにされたくないからだ。
悲しいことに、いい湯はほんとうに少ない。
立ち寄り湯をしなかったかわりに、薩摩の北の守りであった出水の武家屋敷を散策したり、上場高原で満開のコスモスを見たりするなど、これまでにしたことのない観光地めぐりをしてしまった。そして肥薩線の嘉例川駅に立ち寄った。
われわれの温泉めぐりは、ピンポイントである。よさそうな温泉をピックアップして、それを線でつなぐ。A温泉からB温泉へ、途中にある観光スポットには目もくれない。神社仏閣やら、○○高原や××の滝など、そんなものは想像できるからだ。観光スポットの多くは期待を裏切り、見るに値しない。
さて、本日の宿、妙見温泉おりはし旅館に到着。立ち寄り湯をふくめ5回目、今回は別館山水荘に泊まる。この宿、夕食に凝っていてウナギの蒲焼が出てくる。
妙見温泉にリピートするのは、泉質のよさもあるが、アクセスのよさである。鹿児島空港からクルマで15分、羽田発の1便に乗れば、9時過ぎにはすごい湯に浸かることができるからだ。
そしてお気に入りの「キズ湯」に浸かる。ここも昨日の至高の湯と同じく、温めの湯でいくらでも浸かっていられる。しかし、いくら良い湯であっても、昨日の至高の湯のあとでは、感動は薄い。浸かる順番をまちがえたかな。
翌朝、チェックアウトをすまし、妙見温泉の奥にある野湯・和気湯に浸かった。直下からお湯が湧き出している。星5つ。更衣室もなく、囲いもないうえ、ハイキングコースにあるので、女性にはつらいかもしれない。
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